ピアノを始めたいと思ったときに最初にぶつかるのが、楽譜の読み方だと思います。
基本的な楽譜の読み方、具体的には五線譜、音部、音階、大譜表(ピアノスコア)、音符・休符、拍子、小節、テンポなどの音楽記号について詳しく解説します。ピアノ初心者のかたや、楽譜を読んだことがないかたでも分かるように工夫しました。
最初はとっつき辛く感じるかもしれません。ですがカラオケや歌を歌ったことがある人であれば、感覚面では既に習得済みですので安心して読み進めてみてください。
文章にすると長いです。ですが、基本的な楽譜の読み方や音楽記号の読み方は『どのぐらいのテンポでどの音をどのぐらいの長さで演奏すれば良いか』を知ることができれば良いので、シンプルに考えて理解するのが楽だと思います。
ちなみに、楽譜の読み方を体系的に学びたい人は下記本がおすすめです。
それではさっそくご紹介していきます。
五線譜(Staff)
五線譜は、楽譜の中で最も広く使われている楽譜の形です。この五線譜に音楽記号や音符などを載せることで楽譜が完成します。
上下が音の高さ(上に行くほど高い音、下に行くほど低い音)、横が時間軸(左から右に読みます)です。
ピアノでいえば、楽譜で、いつ、どこの鍵盤を、どのぐらいの長さで弾けば良いかが分かるように楽譜は書かれています。
音部記号(Cleff)
音部記号とは、五線譜の中で基準となる音を示すために使われます。
具体的に見ていきます。
五線譜で音の高さや長さが分かると解説しましたが、例えば次のように書かれていた場合はどうでしょうか。
音符が書かれているのは分かりますが、なんの音かわかりません。
そこで基準となる音を示すのが、音部記号です。
ト音記号(G Cleff)
楽譜に書かれているこの記号のことを、ト音記号といいます。
なぜト音記号というのかは、記号の書き始めがト音(ソ)を示すため、ト音記号と呼びます。
楽譜の音符は全てト音(ソ)です。
ヘ音記号(F Cleff)
楽譜に書かれているここの記号のことを、ヘ音記号といいます。
なぜヘ音記号というのかは、ト音記号と同様に記号の書き始めが楽譜のヘ音(ファ)を示しているため、ヘ音記号といいます。
楽譜の音符は全てへ音(ファ)です。
楽譜の音部記号で基準の音が決まり、音符がど何の音か分かる仕組みになっています。
音階(Scale)
前項の音部で基準の音はわかりました。続いてドレミファソラシドはどこに位置するのか楽譜で示します。
ト音記号の音階
ヘ音記号の音階
楽譜の基本ルール
楽譜上の音符は『線の上に音符が書かれているもの』と、『線と線の間に位置する2種類のもの』があります。楽譜はト音記号ですが、ヘ音記号でも同じです。
音符の上下移動
2つの種類が1つ移動するごとに音が変わるルールです。
『ソ』を基準に考えてみましょう。『ソ』は楽譜上線の上に音符が書かれていますね。
1つ上の『ラ』になると位置がひとつあがり、線の間に書かれています。
1つ下の『ファ』は位置がひとつ下がり、線の間に書かれています。
五線譜で解説したように、上にいくほど高い音に、下に行くほど低い音になります。
次はファを基準に考えてみましょう。『ファ』は楽譜上線の中に書かれていますね。
1つ上の『ソ』になると位置がひとつ上がり、線の上に書かれています。
1つ下の『ミ』は位置がひとつ下がり、線の上に書かれてています。
加線
加線はひとことで言うと五線譜で書ききれない音符がある場合に、音符を分かりやすくするために加える線です。
楽譜が加線無しで書かれていた場合、『ド』と『レ』の区別が付きづらくなってしまいます。
分かりやすく音符を表現するために、加線を追加します。楽譜だと『ド』に追加されます。
加線はひとつで足りなければ、都度加えることができます。
楽譜だと、ト音記号の『ラシド』の部分、ヘ音記号の『ドレミ』の部分です。
加線を使えば、ト音記号でもヘ音記号でも、同じ高さの音符を表現することができます。ですがあえて使い分けている楽譜が数多くあります。
ピアノでいうと、ト音記号で音符が書かれている部分は主に右手で弾き、ヘ音記号で書かれている音符は主に左手で弾くことに関係します。
つまり、ヘ音記号で表現できる音符がト音記号で書かれている場合は、作曲者がこの音符は右手で弾いてほしい。
ト音記号表現できる音符がヘ音記号で楽譜に書かれている場合は、作曲者がこの音符は左手で弾いてほしい。という意図があることが多くあります。
その他の理由は、分けることで楽譜が見やすくなる場合、分けることがあります。
時と場合によりますが基本的には、前者の『弾く手を示している』と考えて良いと思います。
大譜表(Great Staff)
ト音記号とヘ音記号が一緒に記述されているものを大譜表と言います。
ピアノの楽譜はこの形式で書かれているので、ピアノスコアと読み替えても語弊はないと思います。
ピアノは一人で低音から高音までいろいろな音域の音を出すことができます。そのためひとつの五線譜では収りきりません。(加線を使えばできなくもないですが非常に見辛い楽譜になってしまいます)
そこでト音記号(高音部)、ヘ音記号(低音部)が書かれた2つの五線譜を使用した楽譜を用います。
楽譜とピアノ鍵盤の関係
それぞれの音符が何の音かは、ここまででお分かりの人も多いと思います。
復習がてらご覧いただけたらと思っています。
また、それぞれの音符がピアノの鍵盤上でどの位置なのか関係性を示します。
色がついているのは、実際ピアノの鍵盤上でどの位置なのかを分かりやすく表現するためです。
では実際のピアノでこの音符がどこに位置するのか、見ていきます。
楽譜上の真ん中の『ド』は、ピアノの真ん中より少し下の『ド』になります。
大まかな楽譜とピアノの関係が、確認していただけたらと考えています。
あまりにも小さすぎて見辛いので拡大します。
真ん中の『ド』を基準に、右にいくほど高い音、左にいくほど低い音になります。
おすすめの楽譜の読み方の本はこちら
小節、音符、休符、拍子、テンポ、調について
文字にすると難しそうですね。ですが普段音楽を聴くときやカラオケで皆さん無意識にやっていることが、文字や楽譜になっているだけです。そう難しく考えず気楽に読んでもらえたら幸いです。
詳細は後述しますがカラオケを例に少し解説します。
- 楽曲が始まりイントロが流れます。無意識に曲が進行する速度を認識しています。(テンポの認識)
- 楽曲のリズムを無意識に認識します。意識的には、足踏みでとったり、手拍子したりします。(拍子の認識)
- 歌い出しのタイミングを合わせます。(小節の認識)
- 歌い始めてキーがあっているか耳で確認しつつ調整します。(調の認識)
- 歌詞に沿って歌います。(音符・休符)
実際にはだいたいこのような感じ方で曲を把握していると思うのですが、解説する順番は『小節』→『音符』→『休符』→『拍子』→『テンポ』→『調』で普段皆さんが行っている行動とは異なります。
なぜかというと、テンポを解説するのに小節や拍子、音符を理解していないと意味不明な説明に。もしくは何度も同じ説明が続いてしまうためです。
最後まで読んだあとで、音楽を聴くときや、先に例に出したカラオケを思い返しながら読んでもらえると、感覚面と知識面が近づき理解が早まると思います。
それでは早速いってみましょう。
小節(Bar)
小節とは、楽譜を区切りの良いところで区切る線です。
後述する拍子に合わせて楽譜に区切り線が入ります。例としてカエルの合唱の楽譜を例に見てみましょう。
小節の部分で歌詞の文節も変わっているのが、なんとなく分かれば大丈夫です。
語弊が多少ありますが、だいたいのポップスや歌謡曲のAメロ、Bメロ、サビなどもこの小節で区切られ変化します。
カラオケだと一般的に歌い始めが小節で始まる歌は入りやすく、小節の途中で歌い始まる曲は入りづらかったりします。
音符(Notes)
楽譜上の音符は『どのぐらいの長さで音を弾けば良いか』を示したものです。実際弾くときの音の長さは後述する拍子とテンポによって変化します。
大きく分けて単純音符と付点音符に分かれます。(他には連音符や装飾音符などありますが、複雑になってしまうのでこちらでは省きます)
単純音符
単純音符とは、全音符を『1』と定義したときに、単純に2で割ることができる音符のことです。
全音符を2で割ると2分音符に、全音符を4で割ると4分音符とういうような関係になります。
逆に2分音符x2=全音符、4分音符x4=全音符ともいえます。
付点音符
付点音符とは、音符の横に点が付いている音符のことです。点が付いている音符の長さが1.5倍長さになります。
また、2つ点が付いている場合は、複付点音符といい、点が付いている音符の長さが1.75倍の長さになります。
付点音符
付点2分音符=2分音符+4分音符
付点4分音符=4分音符+8分音符
付点8分音符=8分音符+16分音符
複付点音符
複付点2分音符=2分音符+4分音符+8分音符
複付点4分音符=4分音符+8分音符+16分音符
複付点8分音符=8分音符+16分音符+32分音符
休符(Rest)
休符とは、音を止める(休む)ということを明示的に指示するために使われます。
音符と同じように単純休符と付点休符があります。
単純休符
音符と同様に全休符を『1』と定義したときに2で割れる休符のことです。
全休符と2分休符の違いは、5線譜で上から2番目の線の下側に書かれているものが全休符、上から3番目の線の上側に書かれているものが2分休符です。
全休符についてだけ少し特殊です。全休符が楽譜に書かれていた場合は、書かれている小節では音を止める(休む)という意味になります。
付点休符
付点休符も音符と同様に点の付いている休符の1.5倍の長さになります。
2つ点が付いているものは複付点休符といいます。複付点休符は、点の付いている休符の1.75倍の長さになります。
拍子と拍子記号(Time/Meter)
楽曲はリズムに合わせて小節で区切ります。区切る意味は曲にメリハリを付けるという意味と、本で例えると章(Chapter)、節(Section)、項(Sub Section)に値します。
文章にタイトルがないとわけがわかりませんよね。
そのリズムを表したのが拍子。楽譜に書かれているものを拍子記号といい、分数で記載されます。
読解方法は、分母にある数字が基準となる音符(楽譜だと『4』ですので、4分音符です)を表し、分子は小節に基準となる音符がいくつ入るのか(楽譜だと『4』ですので4つです)を表しています。
楽譜でいうと『4分音符が4つ入る単位で小節を区切っている』ということです。
読み方は4分(分母)の4拍子(分子)と読みます。(以降は4/4拍子という分数表記にします)
拍子にも種類がいろいろあり、単純拍子、複合拍子、混合拍子などあります。
ややこしくなってしまうのでこの記事では、一般的な拍子で単純拍子の、4拍子、3拍子、2拍子、強拍と弱拍について解説していきます。
4拍子
4拍子はジャンルを問わず、最も一般的に使われているリズムです。
また、4/4拍子は『C』という省略記号で表すこともできます。
上から4/2拍子(2分音符が4つ入るリズム)
4/4拍子(4分音符が4つ入るリズム)
4/8拍子(8分音符が4つ入るリズム)です。
3拍子
3拍子はワルツで使われることが多いリズムです。文字で表すと『ズンチャッチャ、ズンチャッチャ』です。
ちょっと違いますがバレエの『アン・ドゥ・トロワ』とかも3拍子です。
上から3/2拍子(2分音符が3つ入るリズム)
3/4拍子(4分音符が3つ入るリズム)
3/8拍子(8分音符が4つ入るリズム)です。
2拍子
2拍子は行進曲(マーチ)で使われることが多いリズムです。具体的には運動会や体育祭で音楽に合わせて行進の練習をしたときの『右足から前へ〜1・2・1・2・1・2…』のリズムです。文字で表すと『ズンチャ、ズンチャ』です。
有名な2拍子の曲は『アンパンマンのマーチ』や『星条旗よ永遠なれ』などが有名です。
また、2/2拍子は省略記号で表すことができます。(一般フォントでは表現できないので楽譜でご覧になってください)
上から2/2拍子(2分音符が2つ入るリズム)
3/4拍子(4分音符が2つ入るリズム)
3/8拍子(8分音符が2つ入るリズム)です。
星条旗よ永遠なれ(運動会や体育祭でよくかかるので、聴いたことがあると思います)
強拍と弱拍
ここで疑問が生じます。『4/4拍子と2/2拍子って何が違うの?』まさにその通りです。どちらも『4分音符が4つ入る』という意味では同じです。
ではどう違うのか、それは小節の強拍(強めに感じる拍)と弱拍(弱めに感じる拍)が異なります。(強拍と弱拍の中間ぐらいの強さの中強拍もあります)
音楽の中に音の拍を使い分けることでメリハリが生まれ、リズムができます。
文字だと分かりづらいですね。『カエルの合唱』と『アンパンマンのマーチ』を例に強拍、中強拍、弱拍を確認していきます。
強拍・弱拍を意識しながら歌ってみて、感覚で理解するのが一番早いと思います。ぜひ頭の中でも大丈夫なので歌ってみてください。
3拍子の適当な曲が見つからなかったので曲はありませんが、3拍子の場合の強拍、弱拍と中強拍です。
また同じ楽譜を使った4拍子、2拍子です。
3拍子
4拍子
2拍子
速度(Tempo)
速度(テンポ)は、どのぐらいの速さで楽曲が進行するのかを示したものになります。この速度によって実際の音符の長さが決まります。
※以降 テンポと書きます
近代から現代の楽譜には、『♩=60』というような表記が一般的になっています。
意味は『1分間に4分音符が60個入るテンポで演奏してください』という指示になります。
つまり『♩=60』の場合4分音符が1秒の長さになります。
♩=60
全音符 =4秒
2分音符 =2秒
4分音符 =1秒
8分音符 =0.5秒
16分音符=0.25秒
32分音符=0.125秒
♩=120
『♩=120』の場合は単純に『♩=60』の倍の速さですから1/2の長さにすればいいわけです。
全音符 =2秒
2分音符 =1秒
4分音符 =0.5秒
8分音符 =0.25秒
16分音符=0.125秒
32分音符=0.063秒
例としてどのぐらいのテンポなのか『♩=120』の動画を作りました。
4分音符のタイミングでバスドラムが鳴ります。
メトロノームを使いましょう
この秒数を覚える必要は『全くありません。』
計算しながら演奏するのは、極めて困難ですし、意味がほとんどありません。
また、慣れてくれば感覚から目分量で演奏できるようになります。
では、『テンポを把握するにはどうすればよいか?』はメトロノームを使うのが最も簡単で効率的です。
メトロノームの機能
機械に『拍子(4拍子など)』と『数字』を設定すれば、テンポを音や光で教えてくれる機械です。
電子ピアノなどには機能が内蔵してあることがほとんどですので、それを使用しても良いでし、別に購入しておくと、手軽に簡単にすぐに使えるので便利です。
例をいくつかご紹介します。
2拍子
指示は『2拍子で1分間に2分音符が70個入る長さで演奏してください』です。
メトロノームにテンポを設定すると、『2拍子で1分間に2分音符が70個入るリズム』
を音や光で教えてくれます。
3拍子
指示は『3拍子で1分間に4分音符が120個入る長さで演奏してください』です。
メトロノームにテンポを設定すると、『3拍子で1分間に4分音符が120個入るリズム』
を音や光で教えてくれます。
4拍子
指示は『4拍子で1分間に4分音符が140個入る長さで演奏してください』です。
メトロノームにテンポを設定すると、『4拍子で1分間に4分音符が140個入るリズム』
を音や光で教えてくれます。
楽譜の音符の高さを確認する方法
楽譜に慣れるまでの間、音符を確認するのにちょっとだけ楽な方法をご紹介します。
キーワードは『ソシレファラ』です。
ト音記号の場合下から2番目の線から『ソシレファラ』と数えます。
ヘ音記号の場合いちばん下の線から『ソシレファラ』と数えます。
楽譜を見たときに『この音なんの音だろう?』と思ったときに覚えておくと便利です。
調号(Key)
中学音楽の授業で嫌いになることが多いですよね。私もそうでした。
この楽譜は『変イ長調(A♭ Major Scale)』です。
ですが演奏する上で最初から名前を覚えることは、そこまで重要ではありません。
ルールさえ知っていれば楽譜は読むことが可能です。
まず調号とは、なんなのか簡単に解説していきます。
調号(Key)とは
ものすごく簡単に書くと、カラオケで『キー』の上げ下げがありますよね。カラオケのキーとここでの調(key)は、ほぼ一緒です。
違いはカラオケは感覚的な理解であるのに対して、記号で書かれた楽譜という違いだけです。
この『アンパンのマーチ』の冒頭部分は、動画の歌詞の部分を原曲の調(Key)に合わせて採譜(楽譜に書き起こすこと)したものです。カラオケでいう『原曲キー』です。
なぜ調(Key)があるのかは、歌でいえば歌い手さんが出せる音域によって決定したりします。(カラオケなどでは、今日は声の調子が悪いから半音下げようかななど)
音楽でいえば調(Key)がもつイメージによって、作曲家のかたや編曲家のかたが、一番その楽曲が輝く調に決めていることが多くあります。
カラオケでも『やっぱ原曲キーでしょ』などは一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
何も調号が付いていないときは『ハ長調(C Major Scale)』になり『音階(Scale)』で解説したとおりになります。
続いてルールです。
楽譜の調号ルール
ルールは、簡単で『♭(#)が付いている音は、半音下げて(上げて)演奏してください』です。
(ややこしくなるのでこの記事では音名も階名もドレミで統一しています)
どの調でもルールは共通です。
調についてなるべく専門用語を使わず分かりやすく『絶対音感とは』の記事で書きましたので、調についてもっと知りたい人は参考になると思います。
調号が付いていた場合、すべての小節に適用されます。(別の調号が途中に書かれていた場合は、上書きされます)
例の楽譜だと『レ、ミ、ラ、シ』が書かれていた場合は、調号により『レ♭、ミ♭、ラ♭、シ♭』になります。
カラオケのキーと一緒なのでこの楽譜も『ハ長調』にすることもできます。
楽譜の調については、別の記事で詳しく解説したいと思います。
複雑なのでここで覚えておくべきは
- 『♭が付いている音は、半音下げて演奏する』
- 『#が付いている音は、半音上げて演奏する』
を覚えておけば大丈夫です。
まとめ
この記事では基本的な楽譜の読み方を解説してきました。
もっと詳しく楽譜の読み方を体型的に学びたい人は下記の本がおすすめです。
ちなみにピアノを弾くときの椅子の高さの目安を知りたい人は下記の記事が参考になると思います。
それでは楽しいピアノライフを♪